☆読んでいるとお腹がすくような小説
「忙しい毎日の中で、心を温めてくれる場所はありますか?」
慌ただしく過ぎていく日々の中で、そっと立ち寄れるような、静かで穏やかな場所があったらいいと思いませんか?それは、特別な場所でなくても構いません。
ただそこにいるだけで心がほぐれ、優しい気持ちになれる――そんな居場所を描いたのが、「キッチン常夜灯」です。
この物語を読むと、不思議と心がほっこりして、誰かに優しくしたくなる気持ちが湧いてきます。
…そしてそれと同時にお腹も減ってきます。
今回は、長月天音(著)キッチン常夜灯を読んで感想を書きました。
本書を読むか迷っている人や、次に読む本を探している人はこの記事を参考にしてください。
作品概要
「キッチン常夜灯」は長月天音氏による、2023年9月22日に発行された書籍です。
洋食チェーン店の雇われ店長である、南雲みもざはプライベートも仕事もうまくいかず、疲れ果てていました。
そんなときに訪れた、小さなレストラン”キッチン常夜灯”。
そこでの出会いや経験が、彼女を変えていきます。
感想
フレンチシェフの城崎恵とソムリエの堤千花が営むビストロ(小さなレストラン)、”キッチン常夜灯”はさまざまな人たちの居場所なっています。
読んだ人も、その優しい空気感や集う人たちのぬくもりと癒しの気持ちを感じられるはずです。
シェフ・城崎恵の絶品料理やソムリエ・堤が選ぶワインなどの飲み物はもちろんのこと、店に漂う優しい空気感や集う人たちのぬくもりがキッチン常夜灯の魅力です。
料理を食べるということ
「こういう時はね、美味しいものたくさん食べて、お腹いっぱいにするのがいいよ
美味しいってことだけで、頭の中をいっぱいにするの」長月天音(著)キッチン常夜灯 第一話 眠れぬ夜のジャガイモグラタン
仕事やプライベートで嫌なことや、うまくいかないことはよくあることです。
そして、そのことが頭から離れず、他になにも手がつかない、夜も眠れないなんてこともあります。
プライベートに疲れたみもざがキッチン常夜灯でソムリエの堤千花にかけられたのがこの言葉です。
食は人を幸せにします。逆に言うと、お腹がすいている状態では何も考えられないし、気持ちが上を向くこともありません。
好きなものをおなかいっぱい食べると、心も体も満たされます。
「健康に良いものを…」とか「食べ過ぎに注意しないと…」とか、いろいろあるかもしれませんが、たまにはいいでしょう!
好きなものを好きなだけ食べて、また明日から頑張ればいいんですよね。
料理を作るということ
「食材に向き合い、料理に集中することは心を落ち着かせてくれます
忙しい日々こそ、時に丁寧に自分と向き合う時間が必要かもしれません」長月天音(著)キッチン常夜灯 第四話 師弟の絆 バスク風パテ
生きていれば、悩みはとめどなく溢れてくるものです。
頭の中がごちゃごちゃになって、もうわけが分からないし、だんだん余裕もなくなっていきます。
いつも黙々と料理を作る、キッチン常夜灯のシェフ・城崎恵がみもざにかけたのがこの言葉です。
料理はさまざまな工程があり、効率の良い作業や、正確で繊細な作業を求められます。
料理をしていると、料理に集中し「料理以外のことを考えられない(料理のこと以外を忘れている)」状態になるのです。
嫌なことや悩みが頭の中でギチギチになっている状態からいったんすべてを忘れ、開放するとすっきり心が落ち着きます。
しかも、いったんそれを手放すとなんでこんなことに悩んでいたんだ?ってなることも多いと思います。
料理は逆に「何かをゆっくり考える時間」にもなります。
単純作業や煮込みや焼きの時間などには、いろいろなことを考えながら作業をします。
現代はスマートフォンの普及によって、暇だと感じる時間は少なくなっていると感じます。
最近若い人たちの間ではタイパ(タイムパフォーマンス)なんて言葉もあり、ますますその傾向は強くなっているように思えます。
料理中に余裕があるときや単純作業をしているときは、ゆっくり考え事ができます。
というか自然とそうしてしまうものです。
ゆっくり自分と向き合う時間は、悩みを単純化し解決に導く大切な時間だと感じます。
シェフ・城崎には完全に同意ですね。
それに、料理を作ることは小さなチャレンジで、おいしく作れたらそれは成功体験になります。
成功体験の積み重ねは自己肯定感を高め、美味しい料理を食べればさらに心も体も満たされます。
また家族や友人、恋人に料理を振舞えば感謝されますし、さらに気分が良くなること間違いなしです!
普段自炊をしない人も、簡単なものでもいいので料理を作ってみてはいかがでしょうか。
あとがき的なものとオススメ度
優しく温かい雰囲気を感じる作品でしたね。
感情描写や考え方の描写がリアルで、登場人物にとても共感できたと思います。
全体的に分かりやすく読みやすい文章で、上手くいかずに悩むみもざの気持ちも、キッチン常夜灯の二人の気持ちも、よく理解できましたし、登場人物の気持ちや言葉は心に響きました。
美味しそうな料理がたくさん登場するので、読んでいるとお腹がすいてきました。
キッチン常夜灯から、やわらかくてやさしい雰囲気を感じるね。
「キッチン常夜灯」のオススメ度は★3.0です!(満点が★5.0です)
キッチン常夜灯の雰囲気と登場人物の人間模様を楽しむ作品です。
やさしい空気感に溢れる作品なので、忙しく普段本を読めないような人にも読んでほしいです。
こんな人にオススメ
・忙しくて疲れている
・悩みがあり、それが頭から離れない
・食に関係した小説を読みたい
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