☆映画と映画館と映画評論
観るたびに思う。映画は旅なのだと。
幕開けと共に一瞬にして観るものを別世界へ連れ出してしまう。原田マハ(著)キネマの神様 冒頭より
映画って素晴らしいですよね。
特に映画館で見る映画は格別です。
最近はサブスクの普及もあって、みんな映画館に足を運ぶことがめっきり少なくなったように思えます。
それでも映画館で見る映画は、家で見る映画とはまた違った趣があります。
「キネマの神様」はそんな、映画と映画館の素晴らしさを再確認できるような作品です。
作品概要
キネマの神様は原田マハ氏による長編小説です。
2008年に発行され、2021年には映画化もされています。
映画好きの父(丸山郷直こと”ゴウちゃん”)と娘(丸山歩)が、映画の評論を通じて映画と映画館の素晴らしさを再確認するようなストーリーです。
感想
私(こうよう)は本書「キネマの神様」を読んで、2つのことが特に印象的に感じました。
それは「映画と映画館の素晴らしさ」と「映画評論のこと」についてです。
映画と映画館の素晴らしさ
私は映画が好きです。
映画は人生を描き、それを見た人はそれを追体験できます。
約2時間という短い時間で濃縮され収められた世界は、私に人生の素晴らしさを感じさせてくれます。
そして映画館は、その映画の世界への没入感を高めてくれる素晴らしい存在です。
昨今、サブスク(サブスクリプション:定額見放題サービスのこと)の普及で、誰でも手軽に映画を見る機会が増えました。
それはとても良いことで、私もサブスクを利用してたくさんの映画を見ています。
定額なので、普段見ないジャンル映画や一般的な評価の低い映画など、失敗を恐れずに視聴できるのも良いところです。
本当につまらなかったら見るのをやめればいいだけですからね。お金は損しません。
ただそのメリットにも負けず劣らず、映画館の良さもあると思っています。
それは雰囲気です。
前述のとおり、映画館で見たときの映画への没入感は家で見たときと比べ物になりません。
家ではさまざまな邪魔が入りますから。
映画はやはり映画館で見ることを前提としているような部分もありますから、そう思うのも必然だと感じます。
また近年は、”4DX”という環境効果がある映画もあります。
4DXは映画のシーンに合わせて振動や風、熱い寒いといったの感覚効果、ストロボや煙などの視覚効果、それににおいも感じることができます。
他にもimm soundという立体音響のシステムやScreenXという3面マルチスクリーンでの上映などいろいろあるみたいですね。
少し本書でいう映画の良さとはズレてきましたが、どれも家では体感できない良さが映画館にはあるということです。
私はここしばらく、仕事と家庭、そして心の事情で映画館に行けていません。
ここ数年でやっと映画は見れるようになってきましたが、映画館に行くのはまだもうちょっと先になりそうな状況です。
でも、本書「キネマの神様」を読んでいると、映画館の良さをまた思い出せて、いつかまた映画館で映画を楽しめるようになったらいいな……って気持ちになりました。
だからこそ、というわけではありませんが、映画館がなくなったら困るし寂しいです。
家で見る映画、映画館で見る映画、どっちの方が良いなんて言うつもりはありません。
私にとってはどっちも大事で、なくてはなものですから。
映画評論のこと
ゴウちゃんの映画評論は評論とは言えないような内容です。
しかしその素直な文章は読む人の心に響きます。
”評論”という言葉を調べると、「物事の良し悪し・優劣・価値などについて論ずること」、「内容を論じて、批判すること」とあります。
ゴウちゃんの評論には本来の評論の意味にある、良し悪しや優劣について述べたり、批判するようなことは書かれていません。
ゴウちゃんが映画を通じて感じた素直な気持ちとその映画が伝えたいことをポジティブに捉えて、それを思いとして書いている、そのような感じです。
このスタイルで評論するゴウちゃんの気持ちはすごく分かります。
だって映画という自分が好きなものをできれば悪く言いたくないし、せっかく映画を見て良い気分になっているのにその余韻を邪魔するような”負の感情”をわざわざ心に発生させたくないですから。
映画の批評をする、紹介をする場合、映画に対してもそれを読んでくれる読者に対しても素直で正直な気持ちでいることは大事なことだと、私は思っています。
だから、「良いな!」と思ったことはもちろん伝えるとして、「良くないな……」と思ったところも、ちゃんと伝えるべきなんですよね。
でも、マイナスな部分ってあまり書くのが楽しくないんですよね。
だから、私はマイナスが多いと感じた映画の感想は(基本)書きません。
でもマイナスな部分って「人による」って感じでもありますよね。
どういうことかというと、私にとって面白くないと感じた部分でも、あなたにとっては面白く感じるかもしれないってことです。
だから、できるだけマイナスに感じた部分でも見方を変えてフォローを入れたり、逆にそれがいいよね!って感じに持っていくようにしたいと思って書いています。
だって人間だってそうじゃないですか。
短所は長所って言うでしょ。
例えば、せっかちな人は「落ち着きがなくて人を急かしてしまう」ことがありますが、裏を返せば「行動力があって素早く物事を進められる」となります。
逆に慎重すぎるタイプの人は「決断に時間がかかりすぎる」ことがありますが、裏を返せば「リスクをしっかり検討し失敗を防げる」となります。
これが映画だったら、テンポが悪いのも「物語をじっくり丁寧に」描いているとも言えるし、面白みの少ない展開も「リアリティがあって良い」って感じですね。
厳しい評論をしたり、毒づいた批評は一定の評価が得られます。
それは同じような不満や疑問を抱えた人たちからすれば自分の意見を代弁してくれているように感じるからです。
他にも、厳しい批評を読むことで、読者が抱えている鬱憤やストレスが解消されるといった効果もあります。
でもそういうのって、私のスタイルには合わないんですよね。
映画に限らず、基本的にすべては性善説であってほしいという気持ちがあるんです。
そう思うことで日々幸せに暮らしていけているような気さえします。
私はどちらかといえば心の弱い人間なので、なるべくポジティブにいるようにして負の感情に飲まれないようにしているわけです。
ゴウちゃんは娘の歩から見たら、基本ダメ親父のような感じで描かれています。
心の弱さがあるのはゴウちゃんも同じだと感じました。
大好きな映画を悪く言うのはつらいし、それは楽しくないとゴウちゃんも思っているはずです!(だぶんね。)
ゴウちゃんにとって映画評論は、大好きな映画を他の映画好きと共有するための手段で、別にそれ以上のものはないようにも思えましたね。
あとがき的なものとオススメ度
ほとんど内容に触れていませんので、映画評論の話にも書いたように「良かった点」と「イマイチだった点」を上げたいと思います。
○良かった点
・読みやすい文章と映画の素晴らしさを感じられる内容
全体的に読みやすくサクサク読み進められました。
映画が好きな人がたくさん登場して、それぞれから映画に対する愛を感じました。
○イマイチだった点
・物語のシナリオと展開があまり好みではなかった
面白くなかったわけではありません。
ちょっと好みじゃなかったくらいで「映友社」関連の部分がそう感じました。
しかしそれは「キネマの神様」という作品の重要な部分はそこではなく、「映画」という部分により一層フォーカスするためのものだと思います。
余韻が残るラストシーンの描写はとても良かったし、好きです。
最後まで読み終わった後に、私はそう思いました。
また映画館に行きたいと思いました。
やっぱり映画は最高だね。
「キネマの神様」のオススメ度は★4.0です!(満点が★5.0です)
映画好きの人に読んでほしいです。
文章は読みやすくて、ストーリーも難しくないので普段あまり本を読まない人にもオススメです。
こんな人にオススメ
・映画が好き
・心に響く本が読みたい
・普段あまり本を読まない
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