お金は大事。
そんなことは誰だって知っています。
でも、「106億円を熔かした」と聞くと、もう何が何だかわからない世界ですよね。
そんな壮絶な経験をした男が書いたのが、本書『熔ける』です。
本書は、大王製紙の元会長・井川意高氏による懺悔録。
大企業の御曹司、東大卒、社長……そんな輝かしい経歴を持ちながらも、カジノにのめり込み、106億円もの大金を溶かした彼の転落人生が赤裸々に綴られています。
「ギャンブルにハマるとどうなるのか」
「富裕層の金銭感覚とは」
「成功した男がどのようにして転落するのか」――
本書を読むと、そんな疑問が次々と解き明かされていきます。
では、この『熔ける』がどんな本なのか、読んで感じたことを交えながら解説していきましょう。
オススメ度について
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作品概要

作品名 | 熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録 増補完全版 |
著 者 | 井川意高 |
ジャンル | ノンフィクション |
発行日 | 2017年1月31日 |
ページ数 | 238ページ |
大王製紙の創業家に生まれた井川意高氏。幼少期は1200坪の屋敷で過ごし、東大法学部に現役合格。
エリート街道を突き進み、27歳で赤字子会社を立て直し、42歳で本社社長に就任。
しかし、やがてカジノにのめり込み、会社の資金を不正に流用。
合計で106億円を使い込んだ末に逮捕、収監されることに。
本書は井川氏が、自らの半生を振り返りながら、なぜ転落してしまったのかを語る懺悔録。
作品から学べる教訓・人生観(感想)

「運とツキさえ回ってくれば、500万円を5億円に増やすことだってできる。
井川意高(著)『熔ける』 より引用
現に150万円を4時間半で22億円にしたことだってあるじゃないか。
目の前にある20億円を30億円、40億円にまで増やし、今までの借金をすべて取り返すことだってできるはずだ――」
①富裕層の金銭感覚は異次元
「10万円くらい、まあいいか」くらいの感覚で「1億円くらい、まあいいか」と言える人が、この世には存在する。
井川氏にとっての「1億円」は、一般人の1万円くらいの感覚だったのかもしれません。
カジノに通い詰め、短期間で何十億も賭けるという金銭感覚は、普通の人には想像できません。
でも、そんな異次元の世界を知ることができるのは、本書の面白さのひとつです。
②「負けを取り戻そうとする心理」の怖さ
井川氏は、最初はそこまでの大金を賭けていたわけではありません。
でも、「負けを取り戻そう」とするうちに、どんどん賭け金が増えていきました。
この心理は、一般の人にも共通するものがあります。
パチンコや競馬で「負けた分を取り戻したい」と思ったことがある人は多いでしょう。
その気持ちがエスカレートすると、106億円を溶かすことになるのかもしれません。
③本当に反省しているのか?
本書を読んで感じるのは、井川氏の「言い訳の多さ」です。
カジノにハマったのは、「自分の性分でしょうがない」「環境が悪かった」と言います。
また、逮捕されて執行猶予がつかず懲役刑を受けることになったことについても、
「自分が大半の株を所有する子会社から金を借りてなにが悪いのか」
「借りた金をすべて返したのに」
「嵌められた」
といった言い回しが多用されます。
もちろん、ある程度の反省はしているのでしょうが、どこか他人事のように語っている部分もあり、読者によっては「反省してないのでは?」と感じるかもしれません。
なぜこの作品がオススメなのか

- ギャンブルの怖さを知ることができる
- 富裕層の金銭感覚を垣間見れる
- エリートでも転落するという事実が学べる
- 読み物として単純に面白い
特に、ギャンブルが好きな人にとっては「絶対にこうなりたくない」と思わせてくれる、良い反面教師の本になるでしょう。
総評・まとめ

『熔ける』は、成功者が一瞬で転落していく様子を、本人の視点で語られた作品です。
内容としてはかなり衝撃的ですが、富裕層の金銭感覚やギャンブルの恐ろしさを知るには良い一冊。
ただし、本人のスタンスが「反省しているのか微妙」な点や、「一般人には教訓として活かしづらい」点を考慮すると、万人向けとは言い難いかもしれません。
『熔ける』のオススメ度は⭐3です!
特に強いクセはなく、気軽に楽しめる良作。
ただし、人によっては物足りなく感じることも。

異次元の世界を知ることができ、ギャンブルの怖さを体感できて読み物としてもかなり面白いです。

反省の色が薄いのと、一般人には教訓として活かしづらいのはマイナスかな。
こんな人にオススメ

- 富裕層の金銭感覚に興味がある人
- ギャンブルに興味がある、または危険性を知りたい人
- 成功者の転落話に興味がある人
- 多少クセのある語り口でも楽しめる人
『熔ける』は、一種の「ノンフィクション・エンタメ」として読むと非常に面白い作品です。
ただし、教訓を得るというよりは、「こんな世界があるのか」と驚く本として捉えるのが正解かもしれません。
続編『熔ける 再び』も読みましたが、そちらではさらに踏み込んだ話が語られています。
本書を読んで面白いと感じたら、そちらも読んでみるのもオススメです。
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