大山のぶ代(著)【ぼく、ドラえもんでした。】ネタバレなし感想「愛とやさしさに溢れる本」

ノンフィクション

☆のぶドラ世代の人へ

 2024年9月29日、大山のぶ代さんが亡くなりました。

 大山のぶ代さんはドラえもんの声優です。
ドラえもんを知らない日本人はいないと思います。

 私は訃報を知り、この本を手に取りました。

 本書を読むか迷っている人は、この記事を参考にしていただくと幸いです。

作品概要

 ぼく、ドラえもんでした。は、ドラえもんの声優である大山のぶ代さんによる書籍です。

 大山のぶ代さんは1979年のアニメ開始からドラえもん役を演じられていて、2005年に勇退されました。
ドラえもん勇退後は講演活動やテレビやラジオ出演などを中心に活動されていたそうです。
 その後、2012年に認知症との診断を受け、そのことを2015年に公表されてからは、公の場に姿を見せることはなく、近年では老人ホームで余生を過ごされていたそうです。

 そして2024年9月29日に老衰のために東京都の病院にて、90歳で亡くなりました。

 本書は大山さんがドラえもんの声優として活動を始めてから、ドラえもん役を勇退するまでの26年間の出来事と大山さんによるドラえもんへの想いがつづられています。

感想

 大山さんがドラえもんとの出会い、ドラえもん役を勇退されるまでの出来事や感じたこと、ドラえもんへの想いが”大山さんの言葉”で書かれていて、大げさではなく本当にそのすべてが愛にあふれていて、とても感動しました

ドラえもんとの出会い

 ドラえもんのテレビアニメが始まったのは1979年です。
それから40年以上たった今でもドラえもんは続いています。

大山さんの場合

 大山さんがドラえもんと出会ったのは、アニメが始まる前年の1978年です。
初めてドラえもんに会った大山さんは、言葉では言い表せないような衝撃を受けたそうです。
今でこそドラえもんを知らない人はいませんが、当時はまだ知らない人も多かったようで、大山さんもその一人だったのです。

 運命の出会いとは、まさにこのことで、ドラえもんの生みの親である藤子・F・不二雄先生も「ドラえもんって、ああいう声だったんですねえ」とおっしゃったそうです。
 私(こうよう)と同世代の人は、ドラえもんの声といえば、あの独特でちょっとゆっくりの「ぼくドラえもん~」が頭に浮かぶはずです。
というか大山さんのあの声を聞いてドラえもん以外を思い浮かべるなんてできませんよね。

 最初はドラえもんをどう演じるか迷い、苦労されたようですが、大山さんによってアニメのドラえもんのキャラクターが完成されたのだと思います
 ドラえもんのおっとりした感じや、母性を感じるところは、大山さんの声の演技による要素が大きいように思えますから。

 今のドラえもんは水田わさびさんが演じていて、通称:わさドラなんて呼ばれているみたいです。
水田さんのドラえもんはちょっとやんちゃでかわいい感じがしますよね。

 どちらも良いところがあって素晴らしいですよね。同じキャラクターなのに声で性格が違ってみえるのはすごいことですよね。

こうようの場合

 私がドラえもんと出会ったのは、小学校よりもっと前だと思います。
物心ついたころには、アニメのドラえもんを見ていたように思います。

 今の子供たちど同じく、当時の子供たちにもドラえもんは人気がありました。
毎週金曜の夜7時からのテレビ放送に加えて、大みそかの特番もよく見ていました。

 小学生のころは、特にドラえもんの映画が好きで、映画館に連れて行ってもらったり、テレビで映画が放送されれば、見たことがある作品でも、何回も繰り返し見て楽しんでいました。

 テレビアニメは中学校に上がるころには見なくなっていましたが、映画のドラえもんは映画館にはいかなくなったもののテレビ放送があれば見続けていたと思います。
 今確認したら「ドラえもん のび太のワンニャン時空伝」は見たことがありました。
ワンニャン時空伝は大山さんが演じたドラえもんの最後の映画だったようです。

種蒔く人

 大山さんは、藤子・F・不二雄先生のことを”種蒔たねまく人”表現しています。

大山さんの場合

 ドラえもんの生みの親である藤子・F・不二雄先生は、ドラえもんのアニメが始まってから17年後の1996年に62歳という若さで亡くなりました。

 しかし、先生が亡くなった後も、テレビアニメと映画の製作と放送は継続されました。
大山さんは「先生の蒔いた種で、こんな良い若者が育っています。」と思ったそうです。
 そして先生がなくなった後でもドラえもんの映画は、藤子・F・不二雄先生らしさに溢れていて、とても良い作品ばかりだといいます。(私もそう思います。)

 藤子・F・不二雄先生はドラえもん以外にも素晴らしい作品を生み出し、残してくれています。
キテレツ大百科やオバケのQ太郎にパーマン、怪物くんや忍者ハットリくんなど、アニメにもなって誰もが知っているような作品ばかりです。
(※キテレツ大百科以外は藤子不二雄名義で藤本弘ふじもとひろし(藤子・F・不二雄)先生と安孫子素雄あびこもとお(藤子不二雄Ⓐ)先生の共同作品です)
 個人的にはNHKで放送されていたポコニャンがとても好きでした。

 そして先生は、作品だけではなく業界や多くの漫画家の人たちに多大な影響も与えています。
児童漫画にSF(サイエンス・フィクション)を「すこし・ふしぎ」として取り入れたのも面白くて有名ですよね。

 藤子・F・不二雄先生は素晴らしい作品たちだけではなく、その精神と技術も若い人たちに残してくれた、種蒔く人です

こうようの場合

 大山さんは藤子・F・不二雄先生を種蒔く人と表現しましたが、大山さんも種蒔く人だと思います。

 大山さんのドラえもんに対する愛があってこそ、ドラえもんという国民的キャラクターが完成したのだと思うからです。

 大山さんたち、アニメドラえもんのキャラクターを演じている人たちはアニメが始まるときに、キャラクターたちが話す言葉をとても考えて選んだそうです。
ドラえもんのアニメはたくさんの人が見るから、小さな子供たちが真似をして乱暴なことばや誰かが傷つくような言葉を使うべきではないと、みんなで決めたそうです。

 また大山さんは、さまざまなイベントでドラえもんの声優として多くの子供たちと接しています。
そこで子供たちを接する際はとても気を使っていらっしゃって、子供のことを第一に考えて、時には厳しい対応もされています。

 そうやって大山さんの演じるドラえもんや、大山さん自身が触れ合った子供たちは、大人になって今の社会を支えています。
 私が映画好きになったのも、小さいことに観たドラえもんの映画の影響があるかもしれませんし、大山さんの訃報を知った多くの人たちの反応をみると、大山さんが与えた影響はすごく大きなものだということは確実です。

 私のようにドラえもんを楽しんだ視聴者からすれば、藤子・F・不二雄先生も大山さんもその両方がドラえもんの生みの親であり、お二人が種蒔く人です

ありがとうドラえもん

 ドラえもんを長く演じてこられた大山さんは、心の中にドラえもんがいるようで、ときどき大山さんに話しかけてくるらしいです。

 ドラえもんが話しかけてくれた言葉の一部が紹介されていますが、どれもドラえもんが言いそうな、ドラえもんらしい言葉ばかりです。

大山さんの場合

 大山さんはドラえもんを演じている途中で、がんを患われています。
そのとき大山さんに手術を受ける勇気をくれたのがドラえもんだといいます。
 ドラえもんの言葉に勇気をもらった大山さんは無事手術を乗り越え、ドラえもんの声優に復帰され、ドラえもんに感謝されています。

 また、大山さんはドラえもんを見ている子供たちに対して「パイプになりたい」とおっしゃっています。
大山さんのような大人や人生の先輩が自分の持っているものや知識、心を、これから成長する子供たちに伝えたいということです。
 ドラえもんは悪い言葉は使いませんし、目上の人には丁寧に話します。
それに映画ドラえもんでは、毎回テーマのようなものがあり、大事なことをドラえもんたちが子供たちに教えてくれます。

 いろいろなことをドラえもんが教えてくれますが、大山さんの”パイプになる”という願いはドラえもんの声優になったことで、見事に叶えられていて、そのことを感謝されているようでした

こうようの場合

 多分に漏れず私もドラえもんを見て育ってきました。

 要するに今の自分があるのはドラえもんがあったからといっても過言ではありません。

 言い過ぎですか…?いやいやそんなことないでしょう。
だって、今でもドラえもんを見れば大山さんの声が聞こえますし、アニメや映画の好きな場面や印象に残っているエピソードはすぐに思い出すことができますから。
 こんな作品、めったにないでしょう!

 自分がドラえもんを見て育ってきたように、たくさんの人がドラえもん見て育ってきています。
ドラえもんの世界はやさしい世界です。
 世の中は変わっていっていて、便利になればなるほど人とのつながりがだんだん薄れ、他人に気を配れない人が増えてきています。
でも同時に、環境を守る活動や差別をなくそうとする運動は昔より今のほうが盛んになってきてもいて、悪いことばかりじゃないと大山さんは述べています。

 その良いことのすべてがドラえもんのおかげとまではいいませんが、ちょっとしたきっかけというか、小さな影響はドラえもんが与えてくれているのかも…くらいに考えるのは間違いじゃないはずです。

 今こうして好きなことをして平和に暮らしているのは、実はドラえもんのおかげかも…なんて考えたほうが楽しいですよね

 ドラえもん、ありがとう。


あとがき的なものとオススメ度

私の演じたドラえもんの”心”は、次の世代の誰かの中に生きていってくれるといいな。

大山のぶ代(著) ぼく、ドラえもんでした。 より

 大山さんは、自身の想いについて、このようなことを述べています。

 ドラえもんの声優は交代しましたが、ドラえもんは今も人気で、子供たちに影響を与え続けています。
今のドラえもんを作っている人の心には大山さんが演じていたドラえもんに影響されていますし、そしてその心は今のドラえもんを見ている子供たちにも伝わっているはずです。

 大丈夫です。大山さんと大山さんが演じたドラえもんの心は今も生き続けていますよ。

 大山のぶ代さん、本当にお疲れさまでした。そしてありがとうございました。

 どうか安らかにお休みください。

こうよう
こうよう

大山さん、ありがとうございました。

パン
パン

ドラえもん大好き!

ぼく、ドラえもんでした。」のオススメ度は★5.0満点です
 優しい文章で読んでいると心が休まりますし、幸せな気分になります。そしていろいろな思いが溢れてきてすごく感動します。
 大山さんが演じたドラえもんを見ていた人たちは感動して泣いてしまうこと間違いなしです。

こんな人にオススメ

・大山のぶ代さんを知っている

・大山のぶ代さんが演じたドラえもんを見たことがある

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