愛とは、本当に美しいものなでしょうか?
それとも、時に歪み、狂気へと変わるものなのか。
入間人間の『僕の小規模な自殺』は、そんな「愛」の危うさを鋭くえぐり出す作品です。
誰かを愛することの純粋さと、それが暴走したときの恐ろしさ――。
読めば読むほど、心の奥底にじわじわと染み込んでくるこの物語について、深掘りしていきます。
作品概要

作品名 | 僕の小規模な自殺 |
著者 | 入間人間 |
ジャンル | ライト文芸 |
発行日 | 2014年7月24日 |
ページ数 | 202ページ |
読み終えるまでの目安 | 3時間12分 |
しがない大学生の俺のもとに、未来からの使者が来た。
ただしその姿はニワトリだったが。そのニワトリが言う。
『三年後に彼女は死ぬ』と。「彼女」とは、熊谷藍のことで、俺のすべてだ。
その彼女が、死ぬだって……?だが机をつついてコケコケうるさいそいつはこうも言う、『未来を変えろ』と。
どちらも真に受けた俺は、病魔に犯されて死んでしまうという彼女のために、三年間を捧げる決意をする。
そして俺は、彼女の前に立ちこういった。まずはランニングと食事制限だ!
「僕の小規模な自殺」入間人間 [メディアワークス文庫] – KADOKAWA
作品から学べる教訓・人生観(感想)

①歪んだ愛と自己中心的な執着
「彼女の幸せが俺の幸せ……とは限らないんだなぁ。勉強になった」
入間人間(著)僕の小規模な自殺 より引用
主人公の「俺」は、彼女を救いたいと願いながらも、その方法があまりにも独善的です。
彼の愛は、彼女を思いやるものではなく、自分の満足のために彼女を変えようとするもの。
「彼女の幸せ=俺の幸せ」という方程式を疑うことなく進む彼の姿勢は、読者に強い違和感を与えます。
しかし、その違和感こそが、この物語の本質でもあるように思えます。
②主人公に共感できないからこそ、見えてくるもの
俺はここにいる人たちと正反対だった。
入間人間(著)僕の小規模な自殺 より引用
生きるためにいる人たちと、死ぬためにいる俺。
主人公の考えや行動には全然共感できません。
だからこそ、彼女の恐怖や戸惑いがリアルに伝わってきます。
「自分とは全く違う価値観の人間に愛されることほど、怖いものはない」
この言葉がとてもしっくりきます。
主人公の行動が「理解できない」からこそ、読者はこの物語を通して、愛の持つ狂気と恐ろしさを突きつけられるように思えました。
なぜこの作品がオススメなのか

①「愛」の概念を根底から揺さぶる作品
一般的な恋愛小説とは一線を画します。
これは、純愛ではなく「執着の物語」。
読後、愛とは何か?という問いが頭から離れなくなります。
②独特の不快感が癖になる
読んでいて心地よい作品ではありません。
むしろ、不快感を覚えるほど。
しかし、その不快感が、現実にある「愛の闇」のリアルさを際立たせます。
「怖いけど、目を背けられない」
そんな感覚を味わいたい人には、うってつけの一冊です。
総評・まとめ

『僕の小規模な自殺』は、万人受けする作品ではありません。
むしろ、人を選ぶ作品です。
しかし、愛の持つ「狂気」に真正面から向き合いたい人には、深く刺さるはず。
読めば読むほど、愛とは何か?人を思うこととは何か?を考えさせられるのです。
エンタメ性を求める人には向かないですが、心理的な深みを求める人には、一読の価値があります。
『僕の小規模な自殺』のオススメ度は⭐2です!
独特な魅力があるが、好みが分かれる作品。
刺さる人には刺さるはず!

主人公の行動に共感しづらいしエンタメ性もすくないから人を選ぶ作品です。

読後感も爽快じゃないけど、深く考えさせられる作品であることは間違いない。
こんな人にオススメ

- 心理描写が深い作品が好きな人
- 一筋縄ではいかない恋愛小説を求めている人
- 「普通の愛」に疑問を持ったことがある人
- ダークな雰囲気の物語が好きな人
『僕の小規模な自殺』は、決して気軽に読める作品ではありません。
しかし、読み終わった後に、他の小説では味わえない「何か」が残ります。
その「何か」を知りたい人は、ぜひ手に取ってみてほしいです。
コメント