人生の中で、何か大切なものを失ったとき、人はどのように立ち直るのでしょうか。
前を向こうとしても、感情が追いつかないことがあります。
そんなとき、大切なのは“自分と向き合う時間”なのかもしれません。
映画『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』は、愛する人を失った男が、自分という存在を少しずつ解体(Demolition)していく物語です。
破壊の先に見えたもの、それは確かにあった“愛”と“再生”でした。
オススメ度について
このブログでは、映画や書籍のオススメ度を5段階で評価しています。
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作品概要

作品名 (原題) | 雨の日は会えない、晴れた日は君を想う (Demolition) |
監 督 | ジャン=マルク・ヴァレ |
主 演 | ジェイク・ギレンホール |
公 開 | 2016年 |
ジャンル | ドラマ |
上映時間 | 101分 |
金融会社のエリート社員であるディヴィスは、突然の交通事故で最愛の妻を失います。
しかし彼は、涙ひとつ流せず、悲しみの感情さえ湧いてこない自分に戸惑います。
そんな自分に「壊れてる部分を見つけて、全部点検してから直せ」と言った義父の言葉をきっかけに、彼は物理的に“壊す”ことで、心の声に耳を傾けはじめます。
自動販売機会社への手紙、解体作業、防弾チョッキを着て撃たれることも――
突飛な行動の先にあったのは、失った日常に潜んでいた”愛の記憶”でした。
作品から学べる教訓・人生観

解体と再構築
人は「失ってから気づく」ことが本当に多い。
実は私自身も、大きな災害で家族や家を一度に失った経験があります。
デイヴィスと同じく、あまりに突然すぎて涙が出ない。
感情が止まってしまったのです。
本作を観て印象的だったのは、彼が“悲しめない自分”に悩んでいたということ。
悲しいと感じないことは、愛していなかった証拠なのか?――
彼は自問し、迷い、そして破壊していきます。
でも、映画の終盤でデイヴィスは、妻が残していたサンバイザー裏のメッセージに出会います。
「雨の日はメモは見えない。晴れた日にこのメモを見たら、私のことも思い出して」
この言葉が、彼の心を一気に溶かしていく瞬間でした。
悲しめなかったのは、心が壊れていたから。
愛がなかったわけじゃない。
日常に溢れていた“ささいな愛”に、彼はようやく気づきます。
そして初めて、感情が流れ出すのです。
それは喜びであり、深い悲しみでもあり……
でも確かに、それは“前に進むための感情”でした。
この映画を通して、「立ち止まること」や「自分の感情を無理に捨てなくていい」というメッセージを強く感じました。
止まっている自分を責める必要はないし、自分を理解することからしか、本当の意味での“再生”は始まらないのだと思います。

出典:『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』
なぜこの作品がオススメなのか

① 無理に前へ進まなくていい、と気づかせてくれる
デイヴィスは、感情が動かないまま日常を過ごしますが、自販機会社に怒りの手紙を書き続けたり、壊すことでしか心を表現できませんでした。
これは私たちが無理やりポジティブになろうとするときの“空回り”と重なります。
② 哲学的な問いが込められている
「悲しみがなければ、愛はなかったのか?」という問いは重く深い。
答えは映画の中で静かに提示されます。
そのような描写の中で、自分の過去の感情や、関係の記憶を“見つめ直す”勇気が持てます。
③ 破壊から再生へ、というプロセスがリアル
人は壊れないと気づけないことがあります。
強いメッセージですが、描き方はあくまで静かです。
日々、疲れて心を閉ざしがちな現代の働く大人に刺さるはずです。
④ 感情に頼らず描かれる”愛”の形
本作には大げさな感動シーンはありません。
だからこそ、じわじわと効いてきます。
感情表現が苦手な男性にも、自分を重ねやすいはずです。
総評・まとめ

『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』は、派手なドラマチック展開はありませんが、そのぶんじっくりと心の奥に届いてくる作品です。
誰かを失ったとき、自分の感情が止まってしまうことはあります。
でも、それは間違いでも冷たいわけでもなく、ただ壊れてしまっただけかもしれません。
そんなとき、無理に動こうとせず、自分を見つめていい――
本作は、そんな優しい許しと再生の物語でもあります。
『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』のオススメ度は⭐4です!
完成度が高く、このジャンルが好きならより楽しめる作品。

減点理由ではなく、“伝わる人と伝わらない人の差が激しい”という意味での4です。

デイヴィスの行動に共感できない人には少し難解に映るかもしれないけど、理解できる人には、人生の中でずっと残る名作となるはず。
こんな人にオススメ

- 人生に行き詰まりを感じている人
- 過去の喪失体験を持つ人
- 感情表現が苦手だけど、内に抱えるものがあると感じる人
- 哲学的・静かな映画が好きな人
- 自分を見つめ直すタイミングにいる人
だれもが共感できるわけではありませんが、「悲しめない自分」に戸惑ったことのある人には、必ず響く作品です。
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