「愛とは何か」
「エゴとは何か」
この映画を観たあと、きっと誰もが自分に問いかけずにはいられません。
『エゴイスト』は、ただのラブストーリーにとどまらない、愛と喪失を真正面から描いた作品です。
オススメ度について
このブログでは、映画や書籍のオススメ度を5段階で評価しています。
各評価の基準については、こちらでご確認いただけます。
作品概要

作品名 | エゴイスト |
監 督 | 松永大司 |
主 演 | 鈴木亮平 |
公 開 | 2022年 |
ジャンル | ロマンス、ドラマ |
上映時間 | 120分 |
原作 | 高山真氏による同名の自伝小説 |
仕事に邁進し、都会でそれなりの成功を手に入れた浩輔(鈴木亮平)。
子どもの頃は地方で過ごし、母にセクシュアリティを打ち明けることもできなかった過去を抱えています。
そんな浩輔が出会ったのが、パーソナルトレーナーの龍太(宮沢氷魚)。
身体のトレーニングを通じて距離が縮まり、やがて二人は恋人関係になります。
龍太はシングルマザーの母親を支えながら生きてきた青年。
二人の愛は穏やかで、どこまでも優しい時間が流れていきます。
けれど、幸せは長くは続きません。
突然の悲劇が訪れ、浩輔は残された時間と向き合うことになります。
※本作品はR15+指定となっています。
男性どうしの性的な描写がかなり多くありますのでご注意ください。
感想

たとえそれがエゴだったとしても、受け取る側が愛だと感じるならばそれでいい。

ただの「LGBTQ+映画」ではない
『エゴイスト』は、LGBTQ+をテーマにした作品でありながら、それだけでは括れない作品です。
確かに主人公たちはゲイのカップルですが、描かれるのは「誰かを愛する」という、ごく普遍的な感情。
セクシュアリティを超えた、愛することの切なさ、美しさ、そして残酷さが、胸に深く刺さります。
LGBTQ+映画に馴染みのない方でも、この作品はきっと「自分ごと」として感じられるはずです。

「エゴイスト」とは誰のことか
タイトルにもなっている「エゴイスト」。
この言葉は、作品全体を通してずっと問いかけ続けてきます。
愛する人を支えたい。
愛する人のために何かしてあげたい。
でも、それは本当に相手のためなのか、それとも自分のためなのか。
浩輔は龍太や龍太の母に惜しみなく尽くします。
経済的にも精神的にも、持てるものを差し出し続けます。
けれど、ふとした瞬間に、「これって本当に相手のため?自分の満足のためじゃない?」という疑念が湧き上がる。
この「愛とエゴの境界線」というテーマは、LGBTQ+に限らず、誰もが直面する普遍的なものです。

宮沢氷魚と鈴木亮平の圧倒的な説得力
何より特筆すべきは、宮沢氷魚さんと鈴木亮平さんの演技。
二人が醸し出す空気感が、ただの「役を演じている」以上のリアルさで心に迫ってきます。
宮沢氷魚さん演じる龍太は、どこまでも自然体。
笑顔の奥に抱えた寂しさや、不器用な優しさが滲み出る演技に、胸を締めつけられます。
一方の鈴木亮平さんも、圧巻の存在感。
愛する人への惜しみない愛情と、それが裏目に出る痛み。
愛しているのに、うまく愛せないもどかしさ。
そのすべてを、繊細な表情の変化で表現しています。
この二人だからこそ、ここまで濃密な関係性を描けたんだと感じました。

「愛すること」は誰のため?
この作品が突きつける最大の問いは、「愛することは相手のためか、それとも自分のためか」ということ。
浩輔は、自分が龍太にできることをすべてやろうとします。
それは、愛ゆえの行動であると同時に、「愛する人を失いたくない」という自分の欲望でもある。
この「与える愛」と「奪う愛」のせめぎ合いは、誰かを深く愛したことのある人なら、必ず覚えがあるはずです。
相手を想う気持ちと、自分の孤独を埋めるための行動。
その境界線は、どこにあるのでしょうか。

喪失と向き合うということ
『エゴイスト』が描くのは、愛だけではありません。
愛する人を失うこと、その喪失とどう向き合うか。
LGBTQ+という文脈を超えて、「大切な人を失ったことがあるすべての人」に刺さる物語です。
涙を誘う作品は数あれど、ここまで「涙の理由」を考えさせる映画は、そう多くありません。
ただ悲しいから泣くのではなく、「この涙は誰のためのもの?」、「自分の悲しみを癒すために泣いているのか?」
そんな問いが、自分の中から湧き上がってくる作品です。

R15+の表現について
本作はR15+指定。
性的な描写も避けられませんが、それは決して「おまけの演出」ではありません。
むしろ、心が通い合っていく過程を丁寧に積み重ねるための、重要なピースです。
愛のかたちは人それぞれ。
身体的な親密さもまた、二人にとって大切なコミュニケーションです。
そこに真正面から向き合ったからこそ、後半の喪失の痛みがより強く伝わってきます。
浩輔は本当の愛を知らないと感じているようでした。
私から見れば、浩輔は人をまっとうに、まっすぐ人を愛しているように見えましたが、彼自身はそうとは思っていないようです。
浩輔にとってそれは、(映画のタイトルのとおり)自分のエゴだと感じているように見えました。
自分の愛がエゴなんじゃないか、と感じてしまうのは、多くの人が経験する感情だと思います。
愛する気持ちの中にある「相手に自分を受け入れてほしい」「自分の思い通りにしたい」といった欲求を、過剰に自己批判してしまうとそれがエゴに感じるのだと思います。
浩輔の、その思いと格闘しながらも誰かを大切に思う気持ちは真摯で美しく、その姿に共感できたのも、その誠実さがしっかりと伝わってきたからだと思います。

なぜこの作品がオススメなのか

『エゴイスト』は、愛の複雑さと人間関係の深さに向き合う映画です。
LGBTQ+の枠に収まることなく、愛すること、支えること、そして時にはそれがエゴから来るものであることに対してどのように向き合うべきかを考えさせます。
この映画を観ることで、愛や自己犠牲に関する問いを自分自身に投げかけ、他者との関係を見直すきっかけになるはずです。
まとめとオススメ度
『エゴイスト』は、単なる恋愛映画ではありません。
愛とは何か、エゴとは何か。
誰かを愛することは、本当にその人のためになるのか。
そして、喪失とどう向き合えばいいのか。
観る人それぞれが、自分自身に問いかける作品です。
「LGBTQ+映画だから」と敬遠せず、ぜひ多くの方に観てほしい一本です。
愛する痛みと、愛せる幸せ。
そのすべてを抱きしめたくなる、切なくも美しい物語でした。
『エゴイスト』のオススメ度は⭐2です!
独特な魅力があるが、好みが分かれる作品。
刺さる人には刺さるはず!

テーマ自体は「愛とエゴ」という普遍的なものですが、LGBTQ+映画かつR15+指定のため、見る人は選ぶタイプの映画だと思います。

見る人は選ぶ映画だけど、刺さる人にはとことん刺さる。
偏見や思い込みを捨ててフラットな気持ちで見てほしいね。
こんな人にオススメ

- 愛の普遍的なテーマに興味がある人
- 人間関係の深層に迫る作品が好きな人
- 感情豊かな演技に引き込まれる人
- 喪失をテーマにした映画を好む人
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