数学って、ちょっと遠い世界の話だと思っていました。
公式を覚えて問題を解くための道具で、日常生活とは切り離されたもの。
でも、この本を読んで、そんなイメージがひっくり返りました。
『永遠についての証明』は、数学という学問にすべてを捧げた天才たちの苦悩と孤独、そしてそこにしか存在しない美しさを描いた物語です。
「数学が好き」「数学が得意」なんて次元ではなく、「数学に人生を飲み込まれた人々」が見ている景色――
その一端に触れられる、濃密な一冊でした。
数学は苦手だけど、天才にはちょっと憧れる。
そんな私でも、ページをめくる手が止まらなくなる作品でした。
★オススメ度について
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作品概要

作品名 | 永遠についての証明 |
著者 | 岩井佳也 |
ジャンル | 日本文学 |
発行日 | 2022年1月21日 |
ページ数 | 288ページ |
物語の舞台は「協明大学」の数学科。
かつて、特別推薦生として入学した三ツ矢暸司は、数学の天才として周囲から一目置かれる存在でした。
けれど、その類まれな才能ゆえに周囲から孤立し、彼自身も普通の幸せからどんどん遠ざかっていきます。
そして暸司の死後、彼の親友であり、同じく特別推薦生だった熊沢勇一は、暸司の研究ノート「ミツヤノート」を手に入れます。
そこには未解決問題「コラッツ予想」の証明に迫る記述が……。
熊沢は、恩師・小沼先生やかつての仲間・斎藤佐那(さいとうさな)と共に、暸司が見ていた「数覚(すうかく)」の世界に挑んでいくのです。
数学に人生を賭けた天才たちが見た「美しさ」と「孤独」。
その先にある「永遠」とは何なのか――
数学ミステリーと人間ドラマが交錯する作品です。
作品から学べる教訓・人生観(感想)

①数学の世界は、美しくて、怖い
私は数学が得意とは言えません。
むしろ苦手です。
でも、本作に登場する天才たちの目に映る「数」の世界は、私が知っている数学とはまるで違いました。
本作で描かれる「数覚(すうかく)」――
これは、数字の裏に潜むリズムや、規則性が見える特別な感覚。
数学の天才だけが感じ取れるもので、彼らには数式が単なる記号ではなく、別の何かに見えたり、景色のように広がるんです。
無機質な数式の向こう側に、美しさや感動が広がっているなんて想像もしていませんでした。
数学というのは、単に解くだけじゃなく、「感じるもの」でもあるんだなと目からウロコです。
ただ、その美しさに取り憑かれた者は、普通の幸せからどんどん遠ざかってしまう――
このあたりに、どこか宗教的な怖さも感じました。
②憧れと嫉妬は紙一重
作中には「天才」たちが次々に登場します。
そして、彼らはお互いに憧れ、嫉妬し合っています。
「好きなことに没頭して、それを仕事にできる」――
一見、理想の人生に見えます。
私自身、ちょっと羨ましいなと思って読み進めていました。
でも、それを突き詰めた先に待っているのは、他者への嫉妬と、自分への苛立ち。
どれだけ才能があっても、「自分よりすごい誰か」がいる限り、人は満たされないんですね。
天才だろうと凡人だろうと、「隣の芝生は青い」。
そう思うと、天才って、全然ラクじゃないんだなあと、妙にリアルに感じました。
③天才は、孤独である
暸司の人生は、まさに「天才の孤独」そのもの。
誰にも理解されず、誰かと同じ景色を共有することができない――
その孤独が、暸司をずっと苦しめていたんです。
しかも彼自身、自分が天才だなんて思っていません。
ただ、見えてしまうだけ。
その感覚を共有できる相手を探し続けて、見つからなくて、ますます孤独になっていく。
他人から見れば「特別な才能を持つ天才」。
でも本人にとっては「誰にも分かってもらえない絶望」。
「天才=幸せ」なんて単純な話じゃないんだなと、胸がギュッとなりました。
なぜこの作品がオススメなのか

- 数学が苦手でも楽しめる
- 数学者たちの「数学愛」に圧倒される
- 天才のリアルな苦悩と嫉妬に共感
- 数学を通じて「人生とは?」を考えさせられる
数学をテーマにしつつ、人生論や人間ドラマがたっぷり詰まった一冊です。
数学が苦手な私でも、読んでよかった!と思える物語でした。
あとがき的なものとオススメ度

数学というテーマに尻込みする人もいるかもしれませんが、大丈夫。
数学がわからなくても、登場人物たちの情熱や葛藤は痛いほど伝わってきます。
「好きなことに人生を賭けるって、幸せなのか?」
「天才は、何に苦しみ、何を求めるのか?」
数学の話なのに、最後は「生きるってなんだろう?」
そんなことを考えさせられる。
そんな奥深さが、この作品の最大の魅力です。
『永遠についての証明』のオススメ度は⭐5、満点です!
誰が見ても(読んでも)楽しめる傑作。
自信を持ってオススメできます!

読み終わった後に、登場人物たちは幸せだったのか、それとも不幸だったのか、それを考えましたが、答えを出すのはとても難しかったです。
私が出した答えは、ただ「幸せであったと思いたい」それだけでした。

今、数学を勉強している学生さんにも読んでほしい!
こんな人にオススメ

- 数学は苦手だけど、天才の思考に興味がある人
- 好きなことを仕事にすることの光と影を知りたい人
- 人生の意味や、幸福について考えるのが好きな人
- 数学×人生論に惹かれる人
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