人生は試練の連続。
仕事、対人関係、夢と現実の狭間――
それらにどう向き合うかで、人は成長していく。
『星砕きの娘』は、まさにそんな試練と成長を描いた物語です。
鬼と人が交錯する世界で、少年と少女が自分自身と向き合いながら成長する姿には、多くの読者が共感するはず。
善と悪、苦しみと希望、そして支え合う心――
本作には、深く考えさせられるテーマが詰まっています。
作品概要

作品名 | 星砕きの娘 |
著者 | 松葉屋なつみ |
ジャンル | 時代ファンタジー |
発行日 | 2019年8月29日 |
ページ数 | 370ページ |
読み終えるまでの目安 | 6時間36分 |
鬼が跋扈する敷島国。
鬼の砦に囚われていた少年・鉉太は、ある日、川で蓮の蕾と刀を拾う。
それは、彼の運命を大きく変える出来事だった。
砦に戻ると、驚いたことに蕾は赤子へと変化し、やがて美しい娘へと成長する。
彼女の名は蓮華。彼女がふるう刀〈星砕〉は、人には倒せない鬼を滅することができる。
しかし蓮華には秘密があった。〈明〉の星が昇ると赤子に戻ってしまうのだ。
囚われて七年、鉉太は鬼の砦で生き延びることしかできなかった。
しかし、蓮華との出会い、都からの討伐軍の襲来によって、彼の人生は大きく動き出す。
善と悪、苦しみと希望、支え合う心を描いた壮大な物語がここにある。
作品から学べる教訓・人生観(感想)

「貴方がつらく苦しいとき、貴方を励まし、救ってくれる貴重なものは、貴方が投げだそうとしている益体もないものの中にあります。苦難から逃げても構いません。煩わしい重荷を捨てる決断も、時には必要です。しかしそんな場合でも倦まず弛まず、貴方にとっての宝物を探すことを忘れてはいけません」
松葉屋なつみ(著)星砕きの娘 より引用
①人の中に潜む鬼(善と悪)
人の心の中には、時に「鬼」が生まれることがあります。
本作に登場する鬼は、憎しみや怒りといった負の感情が生み出すもの。
それに飲み込まれるか、向き合って乗り越えるかで、人の在り方は大きく変わります。
たとえば私たちも、イライラした時に深呼吸をしたり、気分転換の散歩に出たり、人に話を聞いてもらうだけで、心が少し軽くなることがあります。
そうした小さな工夫が、「鬼」に支配されない第一歩になるのかもしれません。
②己の試練と生きる意味
物語の中心にいる鉉太と蓮華は、それぞれの「試練」と向き合い続けます。
無力さに悩みながらも進み続ける鉉太、急激な成長とその葛藤を抱える蓮華。
二人の姿は、困難の中でも歩みを止めない大切さを教えてくれます。
もし今、自分も何かに立ち止まっているなら、過去に乗り越えた経験を振り返ってみましょう。
小さな成長を思い出すだけで、今の試練に意味が見えてくるかもしれません。
③支え合う心
蓮華を「守りたい」と願う鉉太の心の変化から、人は誰かを支え、支えられる中で強くなれることを感じました。
日常でも、困っている人に声をかけたり、自分がつらいときには素直に助けを求める。
そんなやりとりの中に、本当の信頼や成長があるように思います。
④万物の移ろい
そして、全体を包むテーマは「移ろい」。
変化は時に不安を伴うけれど、それは成長の入り口でもある。
変化に戸惑ったときには、今まで乗り越えてきた変化を思い出し、「今回はどんな希望が見えるかな」と問いかけてみるとよいかもしれません。
なぜこの作品がオススメなのか

①深いテーマとメッセージ
本作は単なる時代ファンタジーではなく、善と悪、成長と試練を描いた哲学的な物語。
鉉太と蓮華を通しさまざまなことを感じられるはず。
②テンポの良い展開
序盤からワクワクする展開が続きます。
最後まで飽きずに読み進められました。
③キャラクターの成長が魅力的
鉉太と蓮華の成長が丁寧に描かれます。
その姿は読者の心を打ちます。
総評・まとめ

『星砕きの娘』は、ただのファンタジー小説でありません。
そこには、人間の本質を見つめ直し、人生の試練をどう乗り越えるかという深いテーマが込められています。
鉉太と蓮華の支え合いながら成長する姿に、多くの読者が心を揺さぶられるはずです。
『リケジョ!』のオススメ度は⭐4です!
完成度が高く、このジャンルが好きならより楽しめる作品。

中盤ではテーマがぼやけ、やや中だるみを感じる部分もありましたが、最後まで読むと物語全体が伝えたいことが明確になり、すべてが繋がります。

時代小説特有の難しい文章だから読みやすさの点で好みが分かれるかも。
それでも、序盤のワクワク感と最後に全てが繋がる美しい構成はすごく良い!
こんな人にオススメ

- 自己成長や人生観に関心のある人
- 時代小説や和風ファンタジーが好きな人
- 深いテーマを持つ物語をじっくり楽しみたい人
『星砕きの娘』は、厳しい「鬼」の物語でありながら、人の優しさや強さに触れられる作品でした。
読後、少し優しくなれる気がする。
そんな物語です。
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