映画【帰れない山】ネタバレなし感想

外国映画

☆自分の生き方や居場所を改めて考えさせられるような映画

 本当になりたい自分や本当に自分が居たい場所……
それを確固たるものとして、持っている人は少ないと思います。

帰れない山』は、都会に住む主人公・ピエトロと、その友人で山に住むブルーノの二人の物語です。
二人はお互いに自分にないものや違う価値観を感じていて、それぞれが不安と孤独を持っていますが、お互いがそれを癒す存在にも、逆にそれが不安と孤独を強調するようなものにもなっています。

作品概要

 帰れない山は2022年の映画です。
パオロ・コニェッティ氏の2017年の小説を原作としています。
本作は、第75回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞したほか、イタリア映画の映画アカデミーが主催するダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞でも4部門で受賞しています。

 1984年、山麓の小さな村を舞台に、都会育ちの少年.ピエトロと牛飼いの少年・ブルーノが出会ったところから物語は始まります。
彼らは友情を深めていきますが、ピエトロは思春期を迎え家族や山から距離を置くようになります。
 やがて大人になったピエトロはブルーノと再会を果たし、ブルーノと山小屋を修理し始めます。

上映時間は2時間26分です。

感想

 ピエトロとブルーノの二人の人生を見ることで、たくさんのことを考えさせられました。

さまざまな対比

 「帰れない山」ではさまざまな対比が描かれます。

都会と田舎、繊細な少年とたくましい少年、目標に向かって進む人と人生に迷う人、一つのことを極めることと多くを知ることなど、たくさんの対比が描かれます。

 どっちの方が良いとか悪いとか、どっちが正解だとかを描いているわけではありません。
ただ、どちらの側もお互いをうらやましく思っているようでした。

 日本のことわざで「隣の芝は青く見える」という言葉があるように、人は自分ばかりいつも苦労しているように感じたり、他人をうらやましく思ったりしがちです。
山に住むブルーノは何不自由なく暮らせる都会に憧れ、都会に住むピエトロは山のほうが良いと言います。
思春期を迎え、自ら父と距離を置いたピエトロですが、その間に父と過ごしていたブルーノのことをうらやましく感じたりします。
その後も自由に生きるピエトロと、家族を持って暮らすブルーノは互いをうらやましく思っているようでした。

 このように自分よりも他人のほうがよく見えたり、自分ばかり苦労しているように感じるのは、人としては自然なことです。
自分にはないものや違う生き方や価値観に気づくきっかけでもありますから。
ただ、それが「自分になにもない」とか「相手にはすべてがある」といった思い込みになってしまうと、とてもつらくなってしまいます。
ピエトロとブルーノは友情を深めることで、ポジティブにもネガティブにも捉えているようでした。

 そうした中でも二人は、お互いの孤独や不安を共有することで、自分の憧れや進むべき道を見つけています。
彼らのように、ネガティブな感情ですらもそれを受け止め、活かすことで、それが成長の原動力になったり、生きる意味に繋がったりするのかもしれませんね。

Felix van Groeningen・Charlotte Vandermeersch (Director). (2022). Le otto montagne [Film]. Wildside.

自分の居場所

 「帰れない山」では自分の居場所についても考えさせられました。
今いる場所が、本当に自分が居たい場所なのか、もし違ったとしたら自分はどこに行きたいのか、と考え込んでしまいましたね。

 自分の居場所について考えることは不安を伴いますが、とても大切なことだと思います。
今いる場所が心地よいと感じる人もいれば、ピエトロやブルーノのように、自分の場所に違和感を覚えながら、自分の居場所について考え模索する人もいるはずです。

 私も「自分の居場所について」を考え、それは理想の場所がどんなものかを見つめ直す機会になりました。
何が自分にとって大事なのか、どんな環境で自分らしくいられるのかを思い描きながら、それでも答えはなかなか出ず……
まあ、そのうちにでも、少しずつでも答えに近づければ良いなと。

 本作は、そうした自分自身と向き合うきっかけをくれた作品で、映画を通して得られたこの感覚は、きっと意味のあるものだったと思います。

Felix van Groeningen・Charlotte Vandermeersch (Director). (2022). Le otto montagne [Film]. Wildside.


まとめとオススメ度

 大きな起伏や事件が起こるでもなく、淡々と、でも着実に進んでいる物語はリアルで、自分のこととして、つい考え込んでしまうようでした。
他人に憧れることの良い部分と悪い部分の両方が見えましたし、”居場所”や”やるべきこと”についても自分自身への問いかけのように感じました。

こうよう
こうよう

視聴後はいろいろ考えこんでしましました。

パン
パン

山の雄大さも感じたね。

 帰れない山」のオススメ度は★3.0です!(満点が★5.0です)
 人間ドラマが好きな人にオススメです。リアリティのある描写で感情揺さぶられ、いろいろ考えさせられます。

こんな人にオススメ

・ヒューマンドラマが見たい。

・考えさせられるような映画が見たい

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