☆面白い本を探している人に向けた記事
元ビッグモーターの幹部、現BUDDICAの代表取締役である中野優作氏の著書「クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言」を読みました。
この記事は、本書に書いてあることで印象に残っていることを、私(こうよう)なりにまとめ、感想と合わせて書いています。
本書を読むか迷っている人や、次に読む本を探している人はこの記事を参考にしてください。
作品概要
クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言は中野優作氏による2023年の書籍です。
本書は3部構成になっていて、チャプター1が中古車販売の営業について、チャプター2が中古車販売店のマネジメントについて、チャプター3が中古車業界のことについて、となっています。
時系列的には、
・チャプター1:中野氏が中古車業界に足を踏み入れてから、実際に営業として活動していた時期
・チャプター2:店長時代から営業本部、関西エリア部長時代
・チャプター3:ビッグモーターを去り、新たに株式会社BUDDICAを立ち上げてから
といった感じで進んでいきます。
本書冒頭で中野氏は、ビッグモーター幹部として、業界やユーザに迷惑をかけた保険金の不正請求の件について謝罪しています。
しかし勘違いして欲しくないのは、中野氏自身はこの件に直接関わっておらず、事件自体も中野氏の退職後に発生(発覚)しています。
ただし、幹部という立場で店舗経営に影響を与えたことは事実なので、まったく他人事とは言っていませんし、その懺悔と自動車業界の変革のために、中野氏は本書を執筆したそうです。
感想
多くの人に向けて書かれている
書かれていることは、自動車販売の営業をされている人や、店舗経営をされている人はもちろん、それ以外の営業やマネジメントをされている人に、参考となるような、かなり具体的な内容です。
またクルマを購入しているユーザの目線でも、購入店舗を選ぶうえで参考になるような部分もあるので、消費者側に向けた本でもあります。
チャプター2では、中野氏が店長やビッグモーターの幹部として、店舗マネジメントや企業経営での奮闘が細かく描かれています。
今マネージャーの人もこれからマネージャーになる人、両方が参考になる内容です。
また、中野氏の情熱的なマネジメントと業界への尽力が圧倒的熱量で語られていて、読み物としても普通に面白いです。
営業テクニックやマネジメントの内容は参考になる部分もあり、ひとつひとつを理解するように読み進め、後半の中野氏のビッグモーターでの奮闘の部分では、話に引き込まれて一気に読んでしまった感じです。
営業の立ち位置
中野氏は、クルマを売るためには、クルマの魅力を伝える以上に、そのクルマのある生活を想像させることが大事だと言っています。
アメリカのバイクメーカーのハーレーダビッドソンも「ハーレーの10の楽しみ」と銘打ちハーレーのある生活を提案するようなマーケティングを展開をしています。
クルマの営業に関わらず、興味があって出掛けた買い物先で、店員さんに自分の気持ちを無視した営業をされてしまって、逆に買う気が失せてしまった経験は誰しもあると思います。
営業の役割は、ユーザの本当の気持ちを引き出し、たくさんの選択肢を与えることにあると中野氏は語っています。
私(こうよう)が営業の人に求めることと言えば、こちらの質問にしっかり答えること、要するにサービスや商品について分かりやすく説明してほしいということでした。
ユーザの本音を引き出し、本人すら認識していなかった、商品に求めるものが新しく分かったら、それはすごいし、ユーザ側にとっても大きなメリットになります。
もし自分を担当する営業の人が、このような考えで対応してくれたらとてもうれしいですよね。
信頼できる営業担当の人が見つかれば、多少値段が高くても、多くの人は、今後もその店舗を利用することでしょう。
販売店の現場の人がそういった営業を行うためには、販売店(販売会社)の理解が不可欠です。
モノをたくさん売るだけが最優先になって、大事なことを見失わないようにしてほしいですね。
店舗経営とマネジメント
マネジメントとは”利益の最大化のための手段”と中野氏は述べています。
経営において、利益を出すことがすべてではないですが、やりたいことの実現にはお金(利益)が必要です。
利益を出すためには、組織のやる気を引き出しそれを維持させることが必要です。
組織は個人の集まりです。その個人のやる気を引き出すことが、マネージャーの役割となります。
働く人にやる気を出せさせるには、働き甲斐を与える必要があります。
働く人に働き甲斐を与えるためには、自分の仕事や職場、成果に責任をもたせなければいけません。
そういった具体的な、中野氏流のノウハウが余すことなく書かれています。
その中で特に印象に残ったのは、若手社員の育て方の部分ですね。
ベテラン社員はよく「最近の若者は~」とか「俺が若い時には~」などと言います。
でも全然最近の若い人は真面目で頑張る人が多いと私は思っています。
適切な指示や指導をすれば、経験だけを武器に働いている向上心のないベテラン社員など、あっという間に追い抜いてしまいます。
要するに、環境が若手の成長や、若手が成果を出す機会の邪魔をしている場合が多いんですよね。
ベテラン社員の扱いと、若手社員の教育が両方うまくかみ合えば、店舗(事業所)経営もうまくいくということです。
マネージャーにはさまざまなタイプの人がいて、圧倒的な実力とカリスマ性で部下を引っ張っていくタイプ、人間性と協調性で部下を動かすのがうまいタイプなど、さまざまです。
しかしどのタイプのマネージャーであっても、自身の役割をきちんと理解して、努力していることは共通しています。
また、部下を誰よりも信頼しています。
中野氏は自身の成功談だけではなく失敗談も語っています。
部下を信頼しきれずに、自らの努力のみで乗り切ろうとした結果、どのようになってしまったのか…
その経験を活かし、その後はどう考えどう行動したのか、詳細に書かれています。
信頼できる部下を育てるのは上司の責務です。
店舗運営の成功は、信頼できるメンバーでなければ、達成できません。
部下のやる気を出して成長を促すのは上司の役割です。
「部下のやる気スイッチは、頑張る上司の背中にある
中野氏はそう語っています。
中野氏が鳴らすクラクション(警笛)
成功には努力が必要であり、部下を育てるにも、自身が努力する姿を率先して見せる必要があると述べると同時に、その危険性も語っています。
「持てる力を全て注いでも、プライベートを全て捨てて仕事にコミットしたとしても、努力が報われない事もある」「危なくなる前に、逃げ出してほしい」
と述べています。
中野氏に限らず優秀でやる気も体力もある、まじめな人が陥りがちなことだと思います。
中野氏は店長時代に成功と挫折の両方を経験し、そう語っています。
中野氏は、その挫折からなんとか立ち直ることができ、さらにその経験を活かして、次の成功をつかみ取りました。
しかしそれでも中野氏は(だからこそ)、その危険性についても強く語ります。
過労死や挫折により自殺する可能性もあったと思います。
失敗により学ぶことは多いです。
優秀な人ほど、失敗を認められず、挽回できると信じ、無理をして頑張ります。
ですが早めに失敗を認めることで、組織や自分自身への損失は最小限に抑えられ、そこからのリカバリも、周りの助けがあれば容易になるはずです。
もしリカバリができなくても、次にまたチャレンジし、それを成功させることで、その失敗が意味のあるものへと変わります。
チャレンジ回数が多ければ多いほど、失敗の回数が増えるのは自然なことです
失敗を認めることは難しいことかもしれませんが、失うものよりも得られるもののほうが確実に多いはずです。
また、中野氏は業界への想いも語っています。
自身がビッグモーターに在籍していた時代以上に、ビッグモーターを含めた中古車業界の”歪み”が酷くなっているそうです。
経営陣が店舗側に要求する、強引なマーケティングと強いプレッシャーもそのひとつです。
車両本体価格を安く表示し、その実表示価格では販売せずに、高額なオプションや保証をセットにしないと売らない「抱き合わせ販売」、
強引な営業(長時間の拘束や詐欺まがいの営業)や、車検でのぼったくりや手抜き作業など、
やったもの勝ちの状態で、やらなければ他社に置いて行かれるのが現状です。
マーケティング合戦は業界全体の大きな問題になり、争いは激化、それにより、ユーザからの信頼を失い、信用と引き換えにお金を手に入れるようなものです。
中野氏はそのような業界を変えていきたいと願い、新会社「BUDDICA」を立ち上げたそうです。
本来「クルマ選びは楽しいもの」と中野氏は語ります。
BUDDICAはクルマ選びをする上での助言者(パートナー)として、クルマを愛する人にとって公平な世の中を作っていく、としています。
中野氏の理想は高く、実現は簡単ではないと思います。
しかし実現すれば、とても素晴らしいことであることは間違いありません。
業界を悪い方向で変えてきたと自覚する中野氏の、新たな挑戦を応援したいです。
あとがき的なものとオススメ度
本書では中野氏が持っている営業テクニックと店舗経営のすべてが書かれています。
チャプター2のマネジメントに関する部分は、営業職でない私(こうよう)にもかなり参考になりました。
本書でノウハウを公開することにより、業界側には本来自動車販売をする側が提供すべき営業レベルの向上、ユーザ側には、その手の内を明かすことで、騙されるような人が減るようになれば、と中野氏は本書で語っていて、確かにかなり具体的で有用なことが書かれていたと思います。
中野氏は自身について「失敗の数は誰にも負けないし、その分多くのことを学んできた」と語っています。
中野氏のような仕事のやり方を、普通の人が同じように(簡単に)できるとは到底思えませんが、考え方や技術のひとつとして参考にするのはアリだと思います。
また、本書に書いてあることがすべて事実で、本当に中野氏がユーザのための経営をしているならば、私も中野氏の会社「BUDDICA」からクルマを購入したいですね!
自動車販売店は無数にあるので”誰から”買いたいか、は重要ですよね!
ネット時代の今は値段はどこも大体同じだしね!
「クラクションを鳴らせ! 変わらない中古車業界への提言」のオススメ度は★3.5です!(満点が★5.0です)
広い範囲の人が読んで、参考になる、または面白いと感じる本だと思います。
営業職の人、マネジメント職の人、クルマを所持しているユーザ、読んで損はない内容でした。
そういった部分に興味がない人でも、スキル部分を読み飛ばして、中野氏の物語だけを追っても十分面白い内容です。
こんな人にオススメ
・営業職、マネジメント職の人
・自動車業界に関係する人
・クルマのユーザ
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