☆穴にとらわれた男の行く末とは
もし、ほぼノーコストで超クリーンなごみ処理ができたら……
それは社会に大きな影響を及ぼすことは間違いありません。
世界中で問題になっているごみ処理の問題がすべて解決します。
それは環境への影響も大きいですが、それと同じくらい経済への影響も大きいはずです。
『庭に穴ができた。ダンジョンかもしれないけど俺はゴミ捨て場にしている』はその「もし」を描いています。

作品概要
『庭に穴ができた。ダンジョンかもしれないけど俺はゴミ捨て場にしてる』はダイスケ氏による小説です。
小説投稿サイト「小説家になろう」にて連載されたwed小説を書籍化したものなります。
ちなみにタイトルに”ダンジョンかもしれないけど”とありますが、登場人物で”穴がダンジョンかもしれない”と思っている人は、主人公も含めて誰もいません。
穴の奥には宝がある。
そう言いだしたのは何者だろうか。(中略)
人間は古代より穴を見ると本能で感じるようにできているのだ。
あの穴には、何かがある、と。ダイスケ(著)庭に穴ができた。ダンジョンかもしれないけど俺はゴミ捨て場にしている より引用
感想
主人公・五味大樹が、自宅の敷地内に大きな穴が開いているのを見つけたところから物語は始まります。
そしてなんとなくその穴にゴミを捨てたヒロキですが、その後ヒロキは穴にどんどんとらわれていきます。
穴の活用法
すべてのゴミは、穴に入れるだけ。
しばらくするとそのゴミは消えて無くなり、なにも残らない。
ゴミを選別する必要もないし、処理のときに有害な物質が発生することもない。
環境にやさしい、超低コストのゴミ処理方法です。
そしてそれは「驚異のゼロコストビジネス」でもあります。
自宅の敷地内に大きな穴が開いてしまった主人公・五味大樹は図らずもそんな究極のエコ企業を経営することになります。
穴にとらわれる主人公
しかしヒロキはまったく会社経営に興味がありません。
それどころか、環境にもお金にもまったく興味をもっていないのです。
正確に言うとそれはちょっと違います。
ヒロキは事業を広げるのも会社を大きくすることにも多少の関心はあるようです。
しかしそれは穴により多くのゴミを捨てるために必要ならばそうするだけ、ということであり「すべては穴のため」なのです。
穴とともに成長する
穴は成長します。
始めは小さくゴミを処理するのにも時間がかかっていたのが、だんだんと大きくなり、処理のスピードも上がっているようでした。
そしてヒロキも穴とともに成長します。
穴にゴミを入れ続けることによる労働により、彼の肉体はたくましく成長します。
そして会社経営となったヒロキは精神的にも成長を見せます。
しかし、それはどう考えても労働や会社経営の経験から来る成長のレベルを逸脱しています。
ちょうどRPGで経験値を得たキャラクターが成長するような感じです。
ヒロキは肉体的にも精神的にも強くなりますが、なぜか知能は成長していません(たぶん)。
そして肉体と精神が強くなる、それ以上にヒロキの穴への執着はどんどん強くなっているようでした。
ヒロキと穴の行く末
物語が進むにつれ、ヒロキの「穴にゴミを捨てる」ことへの熱心さと執着はどんどん増していきます。
災害が起きても、自分の事業が他の事業をつぶすことになっても「ゴミが増えるならば」と彼はそれらを望みます。
ヒロキは言うのです「またゴミが増える。素晴らしい」と。
私は「ヒロキが求めているもの」は実は「穴が求めているもの」だと思えてしょうがありません。
穴はダンジョンなどではなく”生き物”で、ヒロキに取りつき彼を操っているのです。
そう考えれば、ヒロキの穴に対する執着も納得できます。
それに、ヒロキの異常な成長も、穴の成長がその宿主であるヒロキにも影響していると考えれば自然です。
(すべて私の推測ですが……。)
そしてもしその推測が正しければ、もうヒロキ(穴)を止めることは誰にもできないのかもしれません。
世界は穴が持つ「超クリーンで超低コストなゴミ処理能力」を求めていてて、穴にたくさんのゴミを捨てたいと思っています。
ヒロキ(穴)と世界の欲求は同じなのです。
「そして全てはゴミになる」
ぼそっとヒロキがつぶやいた言葉です。
ヒロキ(穴)の成長が止められなければ世界のすべてがゴミになる日が訪れるのも、そう遠くないのかもしれません。
あとがき的なものとオススメ度
「とりあえずゴミでも放り込んでおくか」
で始まった物語がすごいことになってびっくりしました。
だんだんヒロキのことが怖くなるんですよね。
当たり前ですが、小説は描写がなければ分からないし、描写自体もミスリードの可能性もあって余計に怖さを感じました。
だんだんヒロキが人間離れしていくようで、ヒロキ自身から見たヒロキと、他人から見たヒロキのイメージにかなり違いがあるのも恐怖心をあおる要素になっていましたね。
ヒロキがところどころで
「どうしても穴のことを世間に知らせたい、というのであれば背中を押してやるつもりだ」
と言うのですが、その意味が物語が進むにつれて、変わっていくのも印象的でした。
また、読み始める前のイメージよりもかなりホラーよりの作品でしたが、良い意味で裏切られた感じもありましたね。
ヒロキと穴の成長物語とゴミにまつわるビジネス的なお話というまったく違う要素がまじりあって本作をとても独特で面白くしています。
ちなみに本作、すべてが明らかになるような綺麗な完結はしていません。
原作の掲載サイト「小説家になろう」の該当ページを確認しましたが、本書のラスト以降もある程度更新されていたようですが、ここ2年程は更新がストップしているようです。
また更新が再開されて、次巻も発売されると良いのですが……。
本作がもっと話題になればその可能性も高くなるのかなとも思いますので、期待して待ちたいです。
本作『庭に穴ができた。ダンジョンかもしれないけど俺はゴミ捨て場にしている』は面白いので。

怖くて面白かったです。

続きが楽しみだね。
「庭に穴ができた。ダンジョンかもしれないけど俺はゴミ捨て場にしている」のオススメ度は★3.5です!(満点が★5.0です)
一言で言うと「ホラーファンタジー小説」という感じです。
綺麗な完結はしていませんが、この先の展開を想像するのもそれはそれで楽しいと思います。
こんな人にオススメ
・ホラーファンタジーが好き
・読みやすい小説が好き
・完結していなくても構わない


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