愛と狂気が交錯する物語。
『殺戮にいたる病』はその名の通り、残忍な犯罪を描いたサスペンス・スリラーですが、表面的な暴力描写だけでなく、人間の内面に潜む複雑な心情を鋭く抉ります。
サイコキラーの犯罪行動を追いながら、読者は登場人物たちの抱える歪んだ感情や思想に引き込まれ、次第にその心情に共感せずにはいられなくなります。
本作は単なるミステリーにとどまらず、人間の深層に迫る壮絶な心理戦の連続です。
愛は美しく素晴らしいが、それだけに失うのも恐ろしい。
我孫子武丸(著)殺戮にいたる病 より引用
オススメ度について
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作品概要

作品名 | 殺戮にいたる病 |
著 者 | 我孫子武丸 |
ジャンル | ミステリー、サスペンス |
発行日 | 1992年9月 |
ページ数 | 294ページ |
『殺戮にいたる病』は、我孫子武丸によるサイコ・スリラーで、東京の繁華街で次々と発生する猟奇的な殺人事件を描いています。
物語は、事件を追う元刑事の樋口武雄と、犯人である蒲生稔とその母である蒲生雅子の視点で描かれます。
蒲生稔は「永遠の愛」を求めて犯罪を繰り返す狂気の男で、その動機には驚くべき真実が隠されています。
読者は物語が進行するごとに、次第に犯人の心情に引き込まれていき、最後には衝撃的な真実に圧倒されることとなります。
作品から学べる教訓・人生観(感想)

『殺戮にいたる病』では、登場人物たちの心の葛藤と、彼らがどのようにしてその感情に向き合っているのかが描かれています。
①樋口の自己否定
まずは樋口の自己否定とその背後にある喪失感に焦点を当ててみましょう。
彼は妻を亡くし、無力感や自己嫌悪に悩みながら生きています。
自己否定的な感情が強くなると、私たちは無意識のうちに自分を責め、幸せを拒むようになりがちです。
樋口が事件の捜査に没頭する姿勢は、そうした感情から一時的に解放されるための唯一の手段であり、その過程で彼が少しずつ心の整理を進めていることが見て取れます。
「自分は死ぬべきだった」「あの時死んでいたほうがよかった」と自責の念に駆られる樋口の心情に、私は深く共感しました。
この自己嫌悪に苦しみながらも、彼が捜査に取り組む姿が、失ったものにどう向き合うかを教えてくれます。
失ったものを受け入れるには時間がかかりますが、その時間こそが私たちの癒しとなり、自己肯定感を取り戻すために必要な過程であると感じました。
②歪んだ愛
また、本作では「愛」の形が非常に歪んで描かれています。
蒲生稔の愛は、誰もが理解できるような美しいものではなく、悲劇的で狂気に満ちたものです。
そのため読者は彼に対して恐怖や不安を感じますが、なぜ彼がそのような行動に出たのかを少しずつ理解ししていきます。
そしてその過程で共感してしまう部分があるのです。
ほかにも、被害者の一人である、敏子とその妹のかおるのまた歪んだ愛も描かれています。
このように本作は「愛とは何か?」を考えさせる深いテーマも持っており、人間の内面に潜む闇と向き合わせてくれる作品という一面もあります。
なぜこの作品がオススメなのか

本作は単なるスリリングなミステリーを超え、人間の深層に迫るテーマを描いている点で非常に魅力的です。
サイコサスペンスや心理描写に興味がある人には特にオススメできる作品です。
①単なるサスペンスにとどまらず人間心理に鋭く切り込む
『殺戮にいたる病』は、単なるサイコサスペンスにとどまらず、人間心理に鋭く切り込む作品です。
物語が進行するごとに感じる小さな違和感や不安感が、次第に犯人の心情や事件の真相に向けて見事に結びついていく過程は、とても魅力があります。
特に、蒲生稔の狂気に満ちた動機や、彼の愛の形に対する理解は、読者に深い印象を与えるでしょう。
②リアルな心情描写
また、樋口の心理描写が非常にリアルで、彼の自己否定や無力感に共感できる部分が多いです。
彼の内面に潜む苦しみや心の葛藤は、まるで自分のことのように感じられ、心に残ります。
物語が進むにつれて、次第に樋口がどのように自分を受け入れ、事件を解決していくのかが描かれ、彼の成長を見守る気持ちになれます。
総評・まとめ

『殺戮にいたる病』は、サイコサスペンスの枠を超えて、人間心理の深層に迫る作品です。
犯人である蒲生稔の狂気に満ちた愛、そして樋口の自己嫌悪や喪失感といった深い心情描写が、物語を非常にリアルで感情的に魅力的なものにしています。
ラストまで続く緊張感や意外性も含めて、読後の衝撃は大きく、もう一度読み返してしまいたくなるほどです。
しかし、その描写のリアルさゆえに、苦手な人には少し重たく感じられるかもしれません。
犯行の描写や犯人の歪んだ心に共感できない人には少し辛く感じる部分もあるでしょう。
とはいえ、その深い心理描写に共感できる人にとっては、非常に強く印象に残る作品となるはずです。
『惨殺にいたる病』のオススメ度は⭐3です!
特に強いクセはなく、気軽に楽しめる良作。
ただし、人によっては物足りなく感じることも。

ミステリー小説としての面白さは十分にあり、心理描写や犯人の動機に深く引き込まれる要素も満載です。
しかし、その描写の過激さや、登場人物たちの歪んだ心情があまりにもリアルで、万人向けとは言えません。

特に、感情移入が難しい部分や、犯人の思想に共感できない人には辛く感じるかもね。
こんな人にオススメ

- サイコサスペンスや心理サスペンスが好きな方
- 人間の内面に潜む闇や狂気に興味がある方
- 深い心理描写に魅力を感じる方
- 喪失感や自己否定といったテーマに共感できる方
『殺戮にいたる病』は、サイコキラーが登場する典型的なミステリー作品を超え、登場人物たちの心情の葛藤を描いた深い作品です。
ミステリー好き以外でも、リアルな心理描写に興味がある方には、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。
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