心地の良い冗長【森見登美彦(著)聖なる怠け者の冒険】ネタバレなし感想

小説

☆面白い本を探している人に向けた記事

 森見登美彦もりみとみひこ(著)「聖なる怠け者の冒険せいなるなまけもののぼうけん」を読みました。
本書を読むかどうか迷っている方は、この記事を参考にしていただけたらと思います。

作品概要

 聖なる怠け者の冒険せいなるなまけもののぼうけん森見登美彦もりみとみひこ氏による小説です。
2009年6月より朝日新聞夕刊の連載がベースになっていて書籍化にあたり大幅に書き直されています。
 森見登美彦氏といえば、アニメ化もされた「四畳半神話体系よじょうはんしんわたいけい」や「夜は短し歩けよ乙女」、「有頂天家族うちょうてんかぞく」など京都を舞台にした数多くの作品を執筆し、アニメ化もされています。
 作品内での設定や一部登場人物が別作品にも登場するような共通の世界観をもっているのも森見登美彦氏の作品の特徴です。
本作「聖なる怠け者の冒険」もそういった要素が少なからずあり、森見作品ではお馴染みの京都祇園祭ぎおんまつりを舞台に物語が繰り広げられます。

感想

独特の表現いわゆる森見節

 最初っから最後まで森見節全開という感じでした。
本作の主人公は、京都郊外の某科学研究所に勤める若者の「小和田おわだ君」です。
暇を愛し、筋金入りの怠け者を自負する小和田君は森見作品によく登場する標準的森見作品のキャラクターといった感じです。
小和田君の考え方や行動、語り口はまさに森見節全開といった感じです。
 小和田君以外のほかの登場人物も森見作品らしい人物ばかりです。
その面々は、全員キャラクターがしっかり立っていて、独特で癖のある姿は、他作品でそのまま主人公として活躍できそうな雰囲気すらありました。

 また本作はキャラクター以外の”語り部”が存在しています。
最後まで語り部の正体は明かされていませんが、この語り部はまさに著者である森見登美彦氏自身であるような気がしました。
同著者の「美女と竹林」というエッセイ(と書かれているが本当にノンフィクションどうか不明)での語り口と似た感じなので、私(こうよう)としては、ほぼ間違いないと決めつけています!
森見節の文章を読むだけで楽しいです。
「聖なる怠け者の冒険」も楽しく読めました。

森見ワールドを楽しむ

 森見作品にありがちな、ちょっと不思議なファンタジー要素は、本作にも、もちろん登場します。
八兵衛明神や、五代目、土曜俱楽部関連がそうです。
そして、それらの不思議は不思議として存在するだけで、詳しい解説があるわけでも、その謎が解明されることはありません。
ふしぎだなあ…と語り部(著者)も思っている様子ですし、読者もそう思うしかありません。
しかし、別に腹が立つことはありません。
それはいつもどおりで、森見ワールドだから、森見作品ってそういうものだよね、という感じで読者は諦めというか理解というか、それ受け入れることも森見作品を楽しむコツな気がします。
そういったゆるい空気と世界観が「聖なる怠け者の冒険」の魅力であって、それ以上を求めるのはナンセンスなのです。

意味なんてない(なくてもいい)

 冗長でくだらない。最後まで読み終えて出てきた率直な感想です。
悪口ではありません。誉め言葉です。
一応ストーリーや謎のようなものも作品には存在していますが、それが作品の主ではないように感じました。
あくまでストーリー的なものにそって進んでいく物語をバカバカしいなあ、と感じながら、森見ワールドに身をゆだねて、独特の文章表現をゆったり楽しむ作品ですね。

あとがき的なものとオススメ度

 最初から最後まで森見ワールド全開でした。
私(こうよう)は小説でも映画でもどちらかというととストーリーを重視するタイプですが、こういう文章を楽しむ作品もそれはそれで好きで(森見作品は特に好きです)、「聖なる怠け者の冒険」も楽しんで読めました。
 読み終わったときは、(よくある)小説を読み終えたときに感じる満足感や心に残るような感じ、考えさせられるような感覚、そのようなものはまったくなく、ただ単に、終わったー面白かったー、とだけ感じました。
ただ文章を読んで、読むことを楽しんだ、文章表現自体を楽しんだ、そんな感じですね。
このように感じる作品や、作品を執筆できる作家はまれだと思います。
著者の森見登美彦氏はあとがきで”「私なりに居心地の良い冗長」というものがある”と語っています。
これからも心地よい冗長を感じる作品を執筆していただきたいものです。

 「「聖なる怠け者の冒険」のオススメ度は★3.0です!(満点が★5.0です)
 文章と雰囲気を楽しむタイプの作品なので、賛否は分かれると思います。
内容は良くも悪くも、有って無いようなものですが、気楽に読める作品とも言えます。

こうよう
こうよう

なんかよく分かんない感じとか、わちゃわちゃする感じも森見作品っぽくて良かったです!

パン
パン

愛すべき阿保たちの冒険!

こんな人にオススメ

・森見登美彦氏の本を読んだことがあり、割と楽しめた

・気楽に小説が読みたい

・独特の文章と世界観を体験したい

コメント

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