小説

『イリヤの空、UFOの夏』青春とセカイ系が交差する切ない傑作ラノベを語る【書籍レビュー】

「この夏を、僕は一生忘れない」そんなセリフが似合う物語があるとしたら、きっと『イリヤの空、UFOの夏』はその代表格です。普通の中学生だった少年と、どこか影を抱えた少女。二人が出会い、限られた時間の中でかけがえのない日々を紡いでいく──。一見...

『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』が描く「壊れても生きる」人生観とは? 嘘と狂気が交差する異色ミステリー

「この世界には、二人だけの幸福があればそれでいい。」「嘘つき」と聞いて、あなたはどんな人物を思い浮かべますか?腹黒くて信用ならない人物? それとも自分を守るために仕方なく嘘を重ねる人?『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 幸せの背景は不幸』は...

数学にすべてを捧げた天才たちの孤独と苦悩『永遠についての証明』書籍レビュー

数学って、ちょっと遠い世界の話だと思っていました。公式を覚えて問題を解くための道具で、日常生活とは切り離されたもの。でも、この本を読んで、そんなイメージがひっくり返りました。『永遠についての証明』は、数学という学問にすべてを捧げた天才たちの...

「卒業」がテーマの小説5選|別れと旅立ちに寄り添う名作たち

3月といえば卒業シーズン。新しい道へ踏み出す季節です。卒業には、別れ・旅立ち・成長など、さまざまな感情が詰まっています。期待や不安、別れの寂しさ、そして未来への希望――春の一瞬を切り取った作品から、大人にも響く深い物語まで幅広く紹介します。...

余白に映る人生と、描かれる未来『線は、僕を描く』に心を重ねて【書籍レビュー】

何かに挑戦するとき、つい「自分にできるだろうか」と考えてしまうことはありませんか? でも、できるかどうかよりも「やってみること」こそが大切なのかもしれません。『線は、僕を描く』は、水墨画という世界を通じて、自分と向き合い、成長していく青年の...

『クラインの壺』現実と仮想の狭間で揺れる恐怖【書籍レビュー】

「もし、あなたが生きているこの世界が仮想現実だったとしたら?」自分が見て、感じているものが本物だと証明できますか?岡嶋二人の『クラインの壺』は、そんな恐怖と疑問を突きつけてくるサスペンス小説です。仮想と現実の境界が曖昧になったとき、人は何を...

森見登美彦(著)『シャーロック・ホームズの凱旋』感想

☆森見ワールドを堪能できるかどうかが鍵スランプに陥った名探偵ホームズが挑むのは、絶対に解けない謎――それを解決することはすなわち、探偵としての自分自身を否定することになるのです。この手記は脱出不可能の迷宮と化した舞台裏からの報告書である。 ...

『天使の囀り』究極の恐怖と人間の本質に迫るサイエンスホラー【書籍レビュー】

あなたは、自分が自分でなくなっていくとしたら、どう感じますか?『天使の囀さえずり』は、そんな想像するだけでゾッとするような恐怖を描き出したサイエンスホラー小説です。ホラーといえば、幽霊や怪異を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、この...

西澤保彦(著)【七回死んだ男】ネタバレなし感想

☆SF設定×推理作品「高校生らしくない高校生が、何度も同じ一日を生きる。」そう聞くと、不思議な物語を想像するかもしれません。『七回死んだ男』は、SFとミステリーを絶妙に組み合わせ、繰り返される時間の中で真相を追うユニークな作品です。(fun...

芦沢央(著)【汚れた手をそこで拭かない】感想

☆息苦しさと不安がリアルに伝わってくる共感する一方で、冷静に見れば彼らの選択はどこかで間違っていると気づいてしまう――芦沢央あしざわよう氏による小説『汚れた手をそこで拭かない』は、嘘をつく人々の息苦しさや葛藤を描きながら、読者に共感と客観視...