☆息苦しさと不安がリアルに伝わってくる
共感する一方で、冷静に見れば彼らの選択はどこかで間違っていると気づいてしまう――
芦沢央氏による小説『汚れた手をそこで拭かない』は、嘘をつく人々の息苦しさや葛藤を描きながら、読者に共感と客観視の間で揺れるような体験を与えてくれる短編集です。
そしてその物語が終わるとき、真実が明らかになり、登場人物たちが逃れられない現実と向き合う――
読後には、彼らのその後を想像せざるを得ない余韻が残ります。

作品概要
『汚れた手をそこで拭かない』は芦沢央による書籍です。
単行本が2020年9月26日に、文庫版が2023年11月8日に発売されています。
本書はミステリの短編5話で編成されていている短編集です。
感想
嘘をつく人たちの息苦しさや不安がこちらにまで伝わってくる……
まさに著者・芦沢央氏の筆致の巧みさが光る部分だと感じました。
本作は登場人物それぞれが抱える事情や秘密が、読者に重ね合わせるように迫ってくるところが印象的でした。
嘘をつくことの怖さや、それが周囲や自分自身にどんな影響を及ぼすのか――
読んでいるうちに、自分だったらどうするだろうと考えさせられる場面も多かったですね。
また、息苦しさの中に垣間見える人間らしさや弱さが心に響くような、そんな感覚もありました。
追い詰められる人たち
嘘をつくことで事態を収めようとするものの、気づけば嘘に嘘を重ね、出口のない迷路にはまり込んでいく――
その描写が読者にも生々しく迫ってくるようでした。
「どうしてこうなってしまったんだろう」と自問する登場人物たちの苦悩には、共感せざるを得ない部分が多いのも、物語にのめり込んでしまう理由かもしれません。
彼らの選択は、誰しもが日常で起こり得る小さな選択と地続きだからこそ、読者も「もし自分だったら?」と考えずにはいられませんでしたね。
視点による感覚の違い
登場人物の視点に立つとその苦悩や選択に共感してしまう一方で、第三者視点で見たときに、その思い込みや判断が事態を悪化させていると気づかされる――
まさに、人間の持つ主観の危うさや、視点の違いによる印象の変化を巧みに描いている作品だと感じました。
5つの短編のうち、一番最初に収録されている作品「ただ、運がわるかっただけ」は、第三者の目を通した「客観的な視点」を取り入れていて、その視点が救いとなり、読者にとっても一筋の光明を感じさせる展開になっています。
登場人物たちの多くが追い詰められる中、この物語だけが少し異なる印象を持つのは、視点の共有や他者からの助言がもたらす力を示しているようでした。
物事に翻弄されるだけでなく、それを受け止めることで救いがある、というメッセージなのかも、と感じました。
あとがき的なものとオススメ度
短編5話すべてで、嘘がバレる瞬間や真実が明らかにされる場面で物語が終わるという構成は、とても印象的でした。
その「結末を語らない」スタイルが、読者自身に登場人物たちのその後を想像させ、物語を読んだ後もずっと頭に残る効果を生んでいるように思います。
嘘が暴かれた後、彼らがどう向き合い、どんな選択をするのか――
その結末を読者に委ねることで、物語がより現実味を帯び、読後の余韻が深まるように思えましたね。
それは、読者自身の価値観や経験が、物語を補完するような形になっているのかもしれません。
また、「嘘をついた先の責任」や「真実が明らかになった後の人間関係」というテーマは、誰しもが考えさせられるものであり、だからこそ想像力をかき立てられるように思えました。

登場人物の息苦しさ不安をリアルに感じましたね。

非現実的すぎないストーリーも感情移入しやすいポイントだね。
「汚れた手をそこを拭かない」のオススメ度は★3.0です!(満点が★5.0です)
読みやすい文章でサクサク読み進められます。
短編なのでテンポが良いのも好印象です。
こんな人にオススメ
・ミステリが好き
・リアルな心情描写を描いた作品が読みたい


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